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甲状腺機能低下と不妊|甲状腺機能をサポートする食品と妊活への影響

〜食事から甲状腺をサポートする方法〜

はじめに:甲状腺と妊活は深く関係している

 

「不妊検査で甲状腺機能を調べてください、と言われたのですがなぜですか?」——三ツ川レディース漢方鍼灸院(大阪府大東市)でよくいただく質問です。

甲状腺機能低下症(特に潜在性甲状腺機能低下症)は、妊活中の女性に見落とされやすい不妊原因のひとつです。

不妊女性で潜在性甲状腺機能低下症が健常女性より多く認められるという研究報告があります。

甲状腺ホルモン(T3・T4)は排卵・ホルモン分泌・着床・妊娠継続のすべてに関与しており、TSH値が高い状態は妊活にさまざまな悪影響を与えます。

三ツ川レディース漢方鍼灸院(大東市)では20年以上・延べ3,000名以上の妊活をサポートしてきました。

このコラムでは甲状腺機能低下が妊活に与える影響・甲状腺機能をサポートする食品・注意が必要な食品を詳しく解説します。

甲状腺機能低下が妊活に与える影響

甲状腺ホルモン(T3・T4)は全身の代謝を調整するホルモンです。

不足すると生殖系にも直接的な影響が現れます。

甲状腺機能低下の影響

詳細・メカニズム

排卵障害・無排卵

甲状腺ホルモン低下→プロラクチン上昇→GnRH分泌抑制→LH・FSH分泌低下→卵胞発育遅延・無排卵

黄体機能不全

甲状腺ホルモン不足がプロゲステロン産生を低下させる→高温期の短縮・着床不全

月経不順・過多月経

甲状腺ホルモン低下が子宮内膜の調節を乱し、月経周期の乱れや過多月経を引き起こす

着床不全・反復流産

甲状腺機能低下(特に橋本病)では抗TPO抗体が卵子の質・着床環境に悪影響。早期流産リスクが上昇

卵子の質への影響

甲状腺ホルモンが卵胞液・卵子の成熟に関与。不足すると卵子の成熟能力が低下する可能性

 【潜在性甲状腺機能低下症とは】 

自覚症状はなくても、TSH(甲状腺刺激ホルモン)が高い状態(一般的な基準では4.0〜4.5 mIU/L以上)を潜在性甲状腺機能低下症といいます。

不妊治療では体外受精前にTSHを2.5 mIU/L以下に管理することを推奨する専門家が多くいます。

妊活中は担当医にTSH値の確認を相談してください。

甲状腺機能をサポートする5つの栄養素と食品

甲状腺ホルモンの合成・活性化・抗酸化保護には特定のミネラル・ビタミンが必須です。

これらを食事から摂ることが甲状腺機能のサポートの基本になります。

 

栄養素① セレン——甲状腺機能の最重要ミネラル

セレンは甲状腺ホルモンの活性化(T4→T3変換)に必須の酵素(ヨードチロニン脱ヨード酵素)の構成成分です。

2024年の研究では、セレン不足が卵巣機能障害や酸化ストレス増加と関連し、卵子の質と妊孕性に悪影響を与えることが報告されています。

また、橋本病(自己免疫性甲状腺炎)においてセレン補充が抗TPO抗体値を低下させるという複数の研究報告があります。

セレンを多く含む食品

含有量の目安

摂り方のポイント

ブラジルナッツ

1粒で約70〜90μg(1日推奨量の約1〜2倍)

毎日1〜2粒。食べすぎ注意(上限量の超過に注意)

まぐろ(きはだ・びんちょう)

約100gで約108μg

週2〜3回。刺身・焼き魚・缶詰で

いわし

約100gで約65μg

週2〜3回。みそ汁・缶詰・焼きで

牡蠣

約100gで約45μg

週1〜2回。亜鉛も同時補給できる

卵(全卵)

1個で約15μg

毎日。調理法を問わず手軽に摂取できる

 【セレンの1日推奨量と上限】 

日本人女性(妊活中)のセレン推奨量は55μg/日。

上限量は350μg/日(日本人の食事摂取基準2025年版)。

食事から摂る場合は通常の食事で過剰になることはまれですが、ブラジルナッツの大量摂取には注意が必要です。

 

栄養素② 亜鉛——甲状腺ホルモン活性化と免疫調整

亜鉛は甲状腺ホルモン受容体の機能維持・T4からT3への変換・甲状腺ホルモン合成に関与します。

亜鉛不足はTSH上昇と関連することが指摘されています。

また亜鉛は橋本病の炎症抑制・免疫調整にも働きます。

亜鉛を多く含む食品

含有量の目安

摂り方のポイント

牡蠣

約100gで約13mg(食品中トップクラス)

週1〜2回。セレンとの相乗効果も

牛赤身肉(もも・ヒレ)

約100gで約4〜5mg

週2〜3回。鉄も同時補給

かぼちゃの種(素焼き)

約30gで約2.3mg

毎日20〜30g。おやつ・サラダトッピングに

しいたけ(乾燥)

約100gで約2.3mg

週2〜3回。出汁・炒め物に

 

栄養素③ ヨウ素(ヨード)——「量」が重要な甲状腺の材料

ヨウ素は甲状腺ホルモン(T3・T4)の構成成分であり、甲状腺機能に不可欠なミネラルです。

ただし「多ければ多いほど良い」わけではなく、特に橋本病(慢性甲状腺炎)の方では過剰摂取が逆に甲状腺機能を悪化させる可能性があります。

ヨウ素の摂取に関するポイント

詳細

日本人は通常のみそ汁・海藻で十分なヨウ素を摂取できている

昆布・わかめ・のりを日常的に食べる日本の食習慣では、ヨウ素不足になることはまれ

橋本病がある方は昆布の過剰摂取に注意

昆布のヨウ素含有量は非常に多い。昆布おやつ・根昆布水・昆布茶の常飲は控えめに

適量のわかめ・のりは問題なし

通常の食事に使うわかめ・のり・ひじき程度の量は問題なし。制限しすぎる必要はない

ヨウ素サプリメントは自己判断で使わない

過剰摂取リスクがあるため必ず担当医に相談

 

栄養素④ ビタミンD——甲状腺自己免疫の抑制に関与

ビタミンDは免疫調整作用を持ち、橋本病(自己免疫性甲状腺炎)における自己抗体(抗TPO抗体・抗Tg抗体)の産生を抑制する可能性が研究で示されています。

不妊女性でビタミンDが低い傾向があるという報告もあります。

ビタミンDを多く含む食品

含有量の目安

摂り方のポイント

鮭(サーモン)

約100gで約32μg

週2〜3回。最もビタミンD含有量が多い食品のひとつ

いわし

約100gで約19μg

週2〜3回。セレンとの同時摂取でさらに有益

さんま

約100gで約14μg

旬の秋に積極的に

きくらげ(乾燥・UV照射)

約100gで約85μg(乾燥・UV照射品)

週2〜3回。炒め物・スープに。UV照射きくらげが特に高含有

卵黄

1個で約1.1μg

毎日。調理法を問わず

 食事に加えて、毎日15〜30分の日光浴(太陽光によるビタミンD産生)が最も効率的なビタミンD補給です。(「ビタミンDサプリではなく太陽光に当たる必要性」も参照)

 

栄養素⑤ 鉄——甲状腺ホルモン合成酵素の補因子

鉄は甲状腺ペルオキシダーゼ(甲状腺ホルモン合成に必須の酵素)の補因子です。

鉄欠乏は甲状腺ホルモンの合成効率を低下させ、甲状腺機能低下症を悪化させる可能性があります。

不妊女性ではフェリチン(貯蔵鉄)が低い傾向があるという研究報告もあります。

鉄を多く含む食品

種類

摂り方のポイント

あさり・しじみ

ヘム鉄

みそ汁・酒蒸し・スープに。亜鉛も同時補給できる

牛赤身肉

ヘム鉄

週2〜3回。吸収率が高いヘム鉄の主要供給源

豚レバー

ヘム鉄

月1〜2回。鉄・亜鉛・セレン・ビタミンB12が豊富。食べすぎ注意

小松菜・ほうれん草・モロヘイヤ

非ヘム鉄

ビタミンCと一緒に摂ると吸収率が向上。毎日

黒豆・レンズ豆

非ヘム鉄

週3〜4回。食物繊維・葉酸も同時補給

注意が必要な食品——甲状腺機能低下の方に特有の注意点

食品・成分

注意点

推奨される対応

昆布(大量・常飲)

ヨウ素過剰→橋本病の方では甲状腺機能を悪化させる可能性。昆布おやつ・根昆布水・毎日の昆布茶は控えめに

出汁用の昆布(少量)は問題なし。常食・大量摂取は避ける

大豆・大豆製品(過剰摂取)

大豆のゴイトロゲン(甲状腺腫誘発物質)が甲状腺ホルモン吸収を阻害する可能性。加熱でほぼ不活性化

豆腐・納豆・みそなどを毎日適量食べることは問題なし。大豆サプリの大量摂取は避ける

アブラナ科野菜の大量生食(ケール・キャベツ・ブロッコリー)

生の状態でゴイトロゲンを多く含む。ただし通常の食事量では問題なし

加熱して食べる。ジュースとして大量に毎日摂ることは避ける

チラーヂン(レボチロキシン)服用中の注意

鉄・カルシウム・大豆・食物繊維が薬の吸収を阻害。服用から4時間以上空けて食べる必要がある

薬を起床直後に服用し、朝食は30〜60分後に。担当医の指示に従う

グルテン(小麦・大麦・ライ麦)

橋本病はセリアック病との合併が多く、グルテンが自己免疫反応を悪化させることがある。セリアック病の検査を担当医に相談

自己判断でグルテンフリーを始める必要はないが、消化器症状がある場合は担当医に相談

 

東洋医学的な甲状腺機能低下の捉え方

東洋医学に「甲状腺機能低下症」という病名はありませんが、その症状(疲労・冷え・浮腫・月経不順・不妊)は「腎陽虚・脾虚・陽気不足」として捉えられます。

東洋医学的概念

甲状腺機能低下との対応

食養生の方向性

腎陽虚(最重要)

甲状腺ホルモン低下による代謝低下・冷え・疲労は腎陽虚の典型症状と一致

補腎温陽の食材:えび・うなぎ・くるみ・にら・シナモン(桂皮)

脾虚(消化吸収力低下)

甲状腺機能低下による消化器症状(便秘・むくみ)が脾虚に対応

補脾健脾の食材:かぼちゃ・さつまいも・山芋・きのこ類・みそ

痰湿(体内の余分な水分・老廃物)

甲状腺機能低下による浮腫・体重増加は痰湿の蓄積に対応

化痰利湿の食材:わかめ・きのこ・ごぼう・ハトムギ

督脈の虚損

督脈(背骨に沿う経絡)が甲状腺・腎陽を統括する。経絡治療で督脈を補う

温灸(命門・腎兪)による腎陽の補充が最も直接的な経絡治療

妊活中の甲状腺ケアの実践

取り組み

内容

TSH値の確認

妊活中は必ずTSH・抗TPO抗体・FT3・FT4を測定。TSH 2.5 mIU/L以下が妊活の目標値とする専門家が多い

毎日の食事でセレン・亜鉛を意識

週2〜3回のまぐろ・いわし・牡蠣・ブラジルナッツ1〜2粒・牛赤身肉・卵が甲状腺機能サポートの土台

昆布の過剰摂取を避ける(橋本病がある方)

わかめ・のり程度のヨウ素は問題なし。昆布おやつ・根昆布水・昆布茶の常飲は控える

ビタミンDの確認と補給

血中25-OHビタミンD値を測定し不足があれば日光浴と食事で補給。免疫調整に重要

チラーヂン服用中の食事タイミング

服用から食事まで30分以上空ける。鉄・カルシウム・大豆・食物繊維の多い食事は4時間以上後に

補腎温陽の経絡治療

腎兪・命門・関元への温灸で腎陽を補い甲状腺機能と骨盤内環境を同時に改善

まとめ:甲状腺と妊活は切り離せない。食事と医療の両輪で

甲状腺機能低下(特に潜在性甲状腺機能低下症・橋本病)は、見落とされやすい不妊の原因のひとつです。

TSH値の管理は担当医のもとで行いながら、食事からセレン・亜鉛・ビタミンD・鉄・適切なヨウ素を補うことが甲状腺機能をサポートする食養生の基本です。

三ツ川レディース漢方鍼灸院(大東市)では、体質診断で甲状腺機能低下に関連する腎陽虚・脾虚の体質を特定し、補腎温陽の経絡治療・漢方処方・食養生指導でサポートします。

大阪市鶴見区・城東区・旭区・東大阪・門真・寝屋川・交野エリアの方はぜひご相談ください。

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●甲状腺機能低下・橋本病で妊活中の方の体質改善をサポートしてほしい方

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監修・執筆者

不妊専門 漢方鍼灸師

三ツ川レディース漢方鍼灸院

院長 三ツ川 友一郎

【資格】  鍼灸師・柔道整復師・医薬品登録販売者・日本刺絡学会認定鍼灸師 

【学会】(一社)日本はり医学会 理事役員・日本伝統鍼灸学会会員

【役職】大東市鍼灸マッサージ協会 会長(2017年~)

【実績】1995年開業・臨床歴31年・妊娠サポート860名超

【学術発表】医道の日本(専門誌)執筆・第50回日本伝統鍼灸学会学術大会発表

参考文献

【現代医学文献】

 

1. シュクラK、他. 栄養欠乏と不妊能力:現在のエビデンスの包括的レビュー. キュリアス. 2024;doi:10.7759/cureus

 

2. ビバーリーK、他. 甲状腺ホルモン・ビタミン・微量元素が女性不妊に果たす役割. トルコ生殖医学・性医学ジャーナル. 2023;doi:10.4274/tjrms.galenos.2023.

 

3. ヤンJ. 不妊に対するセレンの役割:見過ごされがちな重要栄養素. プロバイオロジスツ. 2024;doi:10.5455/pb.2024.

 

4. リマLG、他. セレンと女性妊孕性の関係:システマティックレビュー. ブラジル産婦人科誌. 2022;44(7):701-709.

 

5. ロカIT、他. セレンが甲状腺自己免疫(橋本病)の抗TPO抗体値に与える効果:メタ分析. サイロイド. 2019;29(12):1665-1675.

 

6. 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所. 日本人の食事摂取基準(2025年版)——ヨウ素・セレンの推定平均必要量・推奨量・耐容上限量. 厚生労働省. 2024.

 

7. ダーレンCR、他. セレン補充と妊娠アウトカム. フロンティアーズ・イン・ニュートリション. 2022;9:1011850.

 

【東洋医学古典】

 

・黄帝内経 素問(上古天真論篇)——「腎気盛……月事以時下」:腎気の充実が月経・生殖機能の根本。甲状腺機能低下(腎陽虚)が排卵・月経に影響するという東洋医学的根拠(紀元前2世紀〜紀元後2世紀)

 

・景岳全書(張介賓著、1624年)——「善補陽者、必於陰中求陽」:腎陽を補うには腎陰の中に陽を求めるという補腎陽の原則。甲状腺機能低下への補腎温陽治療の理論的根拠

 【免責事項】 本コラムは医療行為の代替を目的とするものではありません。甲状腺機能低下症・橋本病の診断・治療については必ず担当の内科医・内分泌科医にご相談ください。チラーヂン(レボチロキシン)服用中の食事タイミングは担当医の指示に従ってください。

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