2021年7月23日
【妊活】鍼灸・漢方からみた甲状腺機能低下症と不妊症の関係

甲状腺機能低下症とは?
先天的な病気や腫瘍、炎症など何らかの原因により”甲状腺ホルモンがつくられなくなり不足”することで、甲状腺そのものの機能が低下してしまう病気です。
甲状腺ホルモンは、”血液の流れに乗って全身の細胞にはたらきかけ、新陳代謝を活発にしたり、体温調節をするはたらき”があります。
骨や神経、精神状態にも関わり、子供の成長や発育の促進など、人間が生きていくうえで必要なホルモンです。
甲状腺機能低下症になる主な原因
まだ全ての原因は明らかになっていませんがほとんどの場合ストレスなどが原因で甲状腺ホルモンが低下しているのではないかと考えられています。
当院に不妊で来院される方のほとんどがこのケースです。
まれな原因として分かっている代表的な疾患は “橋本病(慢性甲状腺炎)”です。
橋本病とは、甲状腺の慢性的な炎症により、本来ならば身体を守るべき抗体が甲状腺を誤って攻撃してしまう病気です。
さらに、甲状腺自体に細菌やウイルスが感染してしまうことで起こる“亜急性甲状腺炎”、下垂体に腫瘍などの異常が生じることで、甲状腺ホルモンの分泌を促すホルモンが低下する“下垂体性甲状腺機能低下症”なども原因といわれています。
甲状腺機能低下症の症状
初期症状はほとんどありませんが全身の新陳代謝が低下するため、以下のような症状があると甲状腺機能低下症の可能性があります。
・皮膚の乾燥
・嗄声(かすれ声)
・易疲労感
・むくみ(眼瞼浮腫や指圧してもへこまない粘液水腫が特徴的です)
・食欲は減っているのに体重が増える
・便秘
・月経異常
・脱毛(眉外側3分の1)、薄毛
などが特徴的な症状としてみられることがあります。
甲状腺機能低下症と不妊の関係性について
甲状腺ホルモンは女性ホルモンの分泌にも関与しています。
甲状腺ホルモンが不足すると、新陳代謝が悪くなり“卵巣の機能が低下”します。
卵巣の機能が低下することで“月経異常”や“排卵障害”などを起こし、不妊になるといわれています。
同時に、甲状腺ホルモンを分泌するよう脳が甲状腺に指令を出すため、甲状腺を刺激して放出させるホルモンが上昇します。
このホルモンは卵胞の成長を妨げたり、妊娠を維持する黄体の働きを下げるはたらきがあるため、卵胞が十分に成長せず、受精しても妊娠を継続することが難しいともいわれています。
東洋医学で考える甲状腺機能低下症による不妊
東洋医学では五臓六腑の働きはそれぞれ支え合ってバランスを保っていますが、何らかの原因でそのバランスが崩れると身体に様々な症状があらわれると考えられています。
甲状腺機能低下症の場合は東洋医学の五臓(肝、心、脾、肺、腎)でいうと、 “肝、心、腎、脾”などが深く関わってきます。
“肝”は全身の気と血を巡らせ、血流を促す働きがあります。
ストレスなどにより働きが失調すると、全体の“気や血”の巡りが悪くなり子宮・卵巣の機能低下や冷えなどの原因になります。
また肝は”自律神経”深い関係があるため、”甲状腺ホルモンや女性ホルモン”などの分泌も関与していると考えられているため肝の働きはとても重要です。
“腎”は生殖機能や内分泌機能に関与し、甲状腺は内分泌器官に含まれます。
さらに身体の水分の調節や成長や発育を促したり、ホルモンバランスを整える役割もあります。甲状腺ホルモンが低下すると、成長や発育、ホルモンの分泌にも影響してくるので関係があると考えられます。
“心”は“神”を司ります。
東洋医学で神とは”意識、感情、記憶”などの生命活動のことをいいます。西予医学でいう“脳”にあたります。
甲状腺ホルモンの低下は、脳にある“視床下部”からの命令により甲状腺ホルモンが放出されるため、関係があると考えられます。
“脾”は“消化や吸収”に関係しています。
脾の機能が低下すると、飲食物の消化や吸収がうまくできなくなるため“食欲不振や便秘”などの消化器症状が出てきます。
そのため脾の働きだけでなく、腸内環境も悪くなってしまいます。
さらに脾は全身の水分代謝を調節する働きもあります。
全身の水分代謝が悪くなると、東洋医学では“痰飲”と考えらており、“むくみや嗄声(かすれ声)”の症状がでてくる原因にもなるため関係があると考えられています。
甲状腺機能低下症の不妊に効果的な鍼灸施術と漢方薬
東洋医学では五臓すべてのバランスが整わなければ身体に何かしらの症状がでてくると考えられています。
例えば五臓の“肝”がストレスにより、働きが失調します。
すると全身の気や血の巡りが悪くなり、甲状腺機能低下症では“冷えや月経異常”などの症状がでてきます。
この場合、施術で“肝”の働きを正常にしてあげると症状は改善されていきます。
このように甲状腺機能低下症の鍼灸施術では血流やホルモンバランスの改善を目的として先ほどご紹介した関係の深い“肝、心、腎、脾”を整えていきます。
甲状腺機能低下症で腎は“八味地黄丸”、脾には”平胃散“、血の巡りが悪い場合は”芎帰調血飲”などの漢方薬がよく使われています。
漢方薬は体質にあったものを服用すること効果が期待できます。
もし体質に合っていないものを服用すると逆に症状を悪化させてしまうことがあるため、自己判断による服用は避け、漢方薬を服用する際はお近くの東洋医学の専門家に相談しましょう。
甲状腺機能低下症による不妊を改善する養生法
ストレスをため込まない
ストレスをかけないことが大切です。先ほどご紹介したようにお話しした通りストレスは肝の働きを失調させます。
さらに甲状腺ホルモンの約80%は肝臓でつくられているといわれているため、肝の働きが低下すると甲状腺ホルモンがつくられにくくなるということです。
食生活の見直し
食生活の見直しをしましょう。アルコールはもちろん、甘い物の摂りすぎや油物なども肝臓に負担をかけてしまうので注意が必要です。
甲状腺機能低下症は冷えの症状があるため、冷たい物の飲みすぎや果物の食べ過ぎはさらに体温を下げてしまいます。身体を温める“生姜やにんにく、ごぼう、にんじん、大根、ほうれん草”など積極的に摂取しましょう。
ただし、“生野菜”は基本的に身体を冷やす作用があります。野菜を摂取する際は蒸したりするなどの工夫が必要です。
腸内環境を整える
ストレスのところでも紹介したように甲状腺ホルモンの約80%は肝臓で、残りの約20~25%は腸内でつくられているといわれています。そのため、腸内環境が悪いと甲状腺ホルモンの産生も悪くなります。
さらに甲状腺機能低下症では、便秘の症状もあります。“食物繊維や乳酸菌”などを摂取し、腸内環境を整えることも大切です。
適度な運動をする
甲状腺機能低下症では全身の新陳代謝が悪くなってしまうので、適度な運動をするのも大切です。
水泳やランニングの有酸素運動ももちろん効果はありますが、1日30分散歩するだけでも効果はあります。身体を動かして代謝や血流の改善、ストレスの軽減などをしていきましょう。
最後に
甲状腺機能低下症であったとしても、正しく管理することで健康な女性とかわりなく、妊娠、出産できます。
そのためにも病院で要相談しながら、養生法や漢方・鍼灸施術を併用していただくことがおすすめです。
当院では鍼灸施術とともに体質にあった漢方薬の処方もおこなっておりますので心当たりのある方は是非一度ご相談ください。
※また大阪以外の遠方の方にも、お身体の状態や不妊治療の経過に合わせて、漢方薬や自宅できるお灸などをお伝えして対応していますので、気軽にメールや電話にてご相談ください。
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